初めての100km in AKITA     

2003.09.28 O.T

1. レースの概要
 今回参加した本大会の正式名称は、”2003北緯40度秋田内陸リゾートカップ第15回記念100キロチャレンジマラソン”。100kmと50kmの2つの部門がある。そもそもは村起こし事業として計画され、第1回の参加者は僅かに68名。その後どんどん人数が増えて今年は約1500名に。
コースは角館町を出発点として、秋田内陸線沿いに北上し、8ケ町村を通過して鷹巣町をめざす100km。途中ほぼ5km間隔で20ケ所の公式エードステーションが有る。50kmの部はそのコースの中間点から出発し、同じ鷹巣のゴールを目指す。出発は朝5時、ゴールは午後6時に閉鎖される。
筆者は過去2回本大会に参加しているがいずれも50kmの部でなんとか完走しているところ。

2.レースの前に
 自身の42kmを超えるレースの経験で、過去3回脱水症状に苦しめられている。直接的な症状は、走る力が出ない、あちこち痙攣がくる、吐き気がするなどである。その原因として次のように考えている。
汗をかく量が増すとミネラル類も多く消費してしまう。ミネラル欠乏状態で給水を繰り返すと体液の成分バランスが崩れて更なる水分の吸収が不可能となり、胃腸が受け付け拒否し嘔吐に至る。予防手段として次の2つがある。まずは給水と共にミネラルも補給する。また、ミネラルを消耗しにくいように自身の体質改善をする。トレーニングによって定常的に多量の汗をかくと、汗に含まれるミネラル成分が節約されるようになる。つまり水っぽい汗になる。
兎に角そのような体質改善の為、準備段階での走り込み量の確保に務めた。レース前6ケ月間は当初400km超/月の走行量を計画していたが、現実は300km前後でなかなか距離が伸びない。ただ、今年の冷夏に助けられて8月は500kmを超え、9月もまずまず。
500km超は自分では初めての経験でさすがに疲労が蓄積してきた。肝心のレース前になってついに腰にきてしまい、急きょ休養を入れる。そんなわけで、まずまずの走行量を確保できた自信と、走り過ぎによる腰の痛みの不安とがない混ぜになった状態でレース当日を迎えた。

3.レース本番で
 朝2時の起床。仲間達がいっせいに準備を始める。その作業内容は、中間点とゴール地点とに運搬依頼する荷物の整理、ナンバーカードに粉末アミノ酸ドリンクをステイプルで固定する、脚の各所にテーピング、摩擦防止剤を足、股間、脇の下に塗布などなど。そして、早い朝食、トイレを済ませて3:45会場の受け付けに向け車の乗り合わせで出発する。
暗くて良くわからないが星が見えないので多分曇り。直射日光を受けるより良い状況だ。出発の号砲に続いて出発ゲートの向こうにはでな花火が連発して打ち上げられ、気分が一気に盛り上がる。まだ薄暗い角館の武家屋敷通りを一団のランナーの群れが通過して行く。早くも沿道に応援の人達がオハヨー、ガンバレと声をかけてくれる。
自分では、いつものレースと違って、周囲のランナーに声をかけるでも無くただ1人黙々と走る。初めての100kmのプレッシャーか、たまたまの気分なのか、ともかく陽気に騒ぐ気がしない。6分/kmのペースを念頭に走りに集中する。現実には時計よりも体感速度を優先し、6.5km/分あたりに落ち着いた。気温も暑い程では無く、ゆっくり走っていることもあって汗が滴る状態では無い。
10km程走ると最初のエードに到着。さっそくスポーツドリンクに手を伸ばす。これなら単独でミネラルと水分のバランスが保たれる筈。周囲はまだ刈り取り前の稲田が延々と続く。はるか前方に山並が霞んで見える。コースで一番の難所となる大覚野峠はあのあたりかと見上げる。
30km地点あたりから上り勾配がきつくなってくる。しかし低速走行の効果か余り上り勾配が気にならない。45km地点でついに大覚野峠の頂点に到達する。出発点からの標高差約500mを昇ったことになる。さすがにあちこち疲労感が漂う。峠を超えての下りは天国かと思いきや、むしろ苦痛だ。ウルトラ対応の省エネ走法では脚の受ける衝撃をなるべく軽減する必要が有り、腰を安定させた状態でしずしず足を運ぶ。そのフォームを維持するのが急な下り勾配では意外と難しい。いや、むしろ疲れるのだ。
下り始めて間もなく、右脚付け根部のところに違和感を感じ始める。出発前の心配はもっぱら腰にあったが、どうやら現実は股関節に来てしまったようだ。兎に角慎重にと自らに言い聞かせながらペースを守って下り続ける。
坂の途中で仲間の太田さん、朝日さんの両ベテランに次々と追い付く。それぞれ調子が良く無いので先に行けと言う。自分だって自信はないが兎に角まだ走れてるのでそれでは、と取り敢えず先行する。この辺りから沿道の声援にも積極的に応えて気持ちの交流をし、元気をもらう。実際僅かな時間だが走る速度も自然と速くなる。
50kmのエードでは靴下まで取って足指にグリセリンを塗り直す。股間や脇の下にもたっぷりと。5時間半も走っているとワセリンの潤滑効果が薄れてしまいあちこち擦れてくる。勿論ドリンク、オニギリ(塩を付けて)、梅干し、果物などミネラルを意識して次々に口に入れる。
気分が一新して元気が出たのも束の間、55km辺りで例の股関節が痛み出す。まだまだ先が長いのに、と気分暗転。この辺りではちょうどうまい具合に5km毎の距離表示と、エードとが交互に配置されている。この2つを心のよすがに何とかそのポイントまではと、頑張って走り続ける。勿論ポイント毎に給水、給食、休憩を取る。それの繰り返しでなんとかレースを継続する。ただ、不思議なことに5kmのラップはそう落ちもせず32分程度に納まっている。
75km地点を過ぎるとついにたまらず歩き出す。残り全部を歩くとしたら13時間の門限に間に合うだろうか?などと弱気の計算をやってみる。おまけにこの辺りから雨が降り始める。
暫く歩く内に股関節の痛みが薄らいで何とか走れそう。しめしめとゴールに向って距離を稼ぐ。しかし、10分も走るとまた痛くなって歩き出す。雨の降りはどんどん強くなってもうドシャ降り状態。道路は一面が川のようになって雨水が流れて行く。走れて無いのと、雨とで寒い。エードで買い物用ビニール袋の底に穴を明けた雨具を頂戴し、穴から首を出してすっぽり被る。これで寒さが凌げて大助かり。おばちゃんにお礼を言って出発する。結局雨が止むまでの1.5時間程その袋のお世話になる。
股関節が痛くなっても、少し歩くと何とか走れる程度に回復する。これの繰り返しでどうにか前に進む。不思議なことにその痛みは止ったままの休養では回復しない。従って、例えエードで休養を取った後でも走る前に暫く歩きを入れる必要があった。
90kmを過ぎると距離表示が1km毎のカウントダウンとなる。気分も楽になって1回に走れる時間もちょっぴり長くなる。雨も上がって寒くも無く、股関節の痛み以外は気分良好。
鷹巣の商店街に入ると街中に響く放送設備で”638番、小川敏夫さん、茨城県”のコールを聞くと嬉しさでつい涙腺が弛んでしまう。各商店の前には店員さんがそれぞれ出て来て殆ど例外無く何か声をかけてくれる。嬉しくッてそれぞれに”アリガトー”と返す。
コース最後の300mは地元名物の大太鼓のリズムの中、多くの声援に囲まれてのエンデイングラン。痛みも忘れて笑顔と共にかっこいいフォームでフィニッシュに駆け込む。感動の余りつい時計を押すのを忘れてしまった。およその所要時間11時間15分。完走を実感する。

4.レースを終えて
 温泉に浸かってさっぱりして後夜祭に臨む。まだ明るさがあって気分が良い。テントの中から生ビールにおでん、キリタンポなど頂き腹ごしらえする。道中随分と食べて来たはずだがもう腹が減っている自分にびっくりする。
改めて大会を振り返ってみるといろんなことが思い出される。自分としては6、7年振りに参加、以前と比較していくつかの変化に気が付く。1つは沿道の応援者で、以前は恥ずかしそうにこそっと応援してくれる人が多かった。今回ははっきりとしっかり応援してくれた。ある農家の庭先ではおばちゃんが目と手は小豆の手入れをしながら大きな声だけ応援に振り向けて楽しんでいたりした。いろんな面でこのレースが周辺地域の人々に馴染んで来たな、という印象を受けた。
もう1つの変化はエードのメニュー。オニギリ、バナナなどの定番物に加えて各町村毎に工夫して走る人が受け入れ易いように工夫してくれるのが嬉しい。例えば、氷入りドリンク、茸のみそ汁、西瓜、マルメロ(杏のようなものらしい)、のり巻き、お茶、コーヒー、梅ジュースなどなど。そして、それらをサービスしてくれるおばちゃん達の笑顔も嬉しいが、15回ともなるとその次世代に当たる娘さん(と思う)達も一緒に並んでくれる。紙コップ1つ1つにマンガや月と火星など現代風のイラストつきで若い娘の心意気を感じさせる。
公式のエードは20ケ所で以前それ以外は余り見かけなかった。今回は自分のテーブルを持ち出して個人的にエードを開設してくれるところが目に付いた。畑の中でおじさん2人がラグビーボール状のでっかい西瓜を豪快に切って盛んに勧めてくれる。”秋田の西瓜はこんなに大きいの?”と聞くと、”これはマラソン用だー”と。どうやらマラソンに時期を合わせて栽培したとっておきの逸品らしい。また、他の所ではしそジュースに氷を浮かべてくれてこれも疲れた身体においしかった。終盤になってヨタヨタ走っていると、思いがけずにひょっこり出現するこのような私設エードはほんとに嬉しい。心意気をこちらで感じ取ってしまうので嬉しさも倍増し疲れも一瞬どこかにいってくれる。これも大会が地域に馴染んだ1つの証左と思う。
一緒に走る同輩ランナー達にも変化があって、女性が随分増えた気がする。そして、その彼女達が長い距離でも逞しくかつ着実に走る様子はやはり昔日の感が有る。女性に限らず男性もさすがウルトラアスリートで、スリムで筋肉質の体型、そして大旨ファッションもいい。なかなかの眺めでは有る。
最後に5km毎のラップを付記すると、

~0   ~5 ~10 ~15 ~20 ~25 ~30 ~35 ~40 ~45 ~50
00:33 33:02 31:00 31:42 31:22 30:59 32:20 32:23 33:46 33:18 33:40

~55 ~60 ~65 ~70 ~75 ~80 ~85 ~90 ~95 ~100
33:45 32:02 32:26 31:57 31:40 35:52 40:42 41:26 37:04 35:38
<2003.10.4.記>


                               



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